長く愛される服づくりで
着る人に寄り添う
長く愛される服づくりで
着る人に寄り添う
ブランドが、ものづくりにおいて譲れないもの、妥協できないことは何かを追求する連載「EGO つくり手の静かなる意志」。第2回は、創設24年を迎える“ADIEU TRISTESSE(アデュー トリステス)”のデザイナーにインタビュー。優しい着心地と手の込んだデザインの奥には、すべての女性に「おしゃれを自由に楽しんでほしい」という願いが込められていました。
ノスタルジックな色調のプリントワンピース、アンティークのようなレースのブラウス……。ADIEU TRISTESSEといえば、甘くて優しさを帯びたアイテムが印象的ですが、その中にも、どこか意志の強さを感じさせる雰囲気が。デザイナー曰く「内側に芯のある女性像を、常に思い描いています。旅やカルチャーが好きで、服を自由に楽しんでいる……そんな大人をイメージしています」。ただ甘いだけではない。ADIEU TRISTESSEが表現したいのは、時代や世代にとらわれず、自分の気持ちに従い、柔軟な発想でスタイリングできる服。その気持ちが、デザインの中に凛としたムードをもたらしているのかもしれません。
アート、旅、自然……
そこから沸いた“気持ち”を服に
ブランドイメージの根底にある、服を自由に楽しむ女性像。コレクションテーマも、アートや旅、自然といったものが多いそうです。たとえば画集や写真集などもインスピレーションの源で、かつてはフランスの画家アンリ・マティスやアメリカの写真家アーヴィング・ペンなどを取り上げ、コレクションを展開したこともあったとか。「アートや旅などを通して、心が揺さぶられたり、浮かんできた気持ちを、服に投影させています。たとえば今季のテーマは“旅”ですが、旅に着て行く服というよりは、旅先での“記憶”を表現したいと思っています」
言葉では表せない
繊細な色使いはブランドの軸
デザインの中で、譲れないもののひとつが「色」。
ブランドが大切にしている膨大なカラーチップをもとに、服のデザインに合わせて毎回吟味しています。たとえばひと言で“ピンク”といっても、明度や彩度の違いで、そのトーンには大きな差が。ふさわしい色を選び出すのに、チップは大きな役割を担っています。「ADIEU TRISTESSEで使われる色はニュアンスカラーが中心。とても繊細なので、言葉でいい表せないことも多くて。こうやって視覚でブランドチームで共有することは重要ですし、どんな色にしようかとみんなで選ぶのも、とても楽しい時間です」と、デザイナーは語ります。
リバティプリントにも
ブランドの感性を注いで
毎年人気のリバティプリント・シリーズは、ブランド初期からのアイコンのひとつ。しかもADIEU TRISTESSEでは、別注をかけることが多いそうです。「このペイズリーも、比べると原本(イエロー)は柄が大きいのですが、今回はそれを縮小させ、色味もテーマに合わせて、ブランドらしいノスタルジックなカラーに変えています」。今季のアイテムはワンピース、スカート、そしてサロペット。すべてにぴったりな柄の大きさや色を決めるのに、何度も試作を重ねているとか。定番アイテムだからこそ、より新鮮さを感じていただけるような、ものづくりを心がけています。
繊細なレースや刺繍が映える
美しいコットンブラウス
もうひとつのアイコンが、インドコットンのレースや刺繍を使ったブラウスです。ADIEU TRISTESSEのアイテムは天然素材をベースにしていて、こちらは優しい肌触りのインドコットンに、数種類の繊細なレースをあしらったデザイン。レースには、昔ながらの機械で編んだ、緻密な“アンティークレース”と呼ばれるものを採用しています。ブラウス自体の洗いがかかった優しい風合いも、アンティークのような佇まい。「肌触りはもちろん、シルエットも含めてどう美しく見せるかは、ブランドの真髄ともいえます」。
素材とシルエットの調和が
真の着心地のよさを生む
着心地を追求するために心がけているのは、まずは上質な素材選び。肌に触れて心地よいだけでなく、長く愛用していただけるような素材選びを行っています。何年も着てもらうために、〈BLACK DYE〉といった染め替えサービスを定期的に実施しています。サイズ感もまた、袖を通したときに入る服と体の間の空気感、ふわっとした袖のボリューム、フレアの分量、胸元の開き、着丈など、細かいところまで計算されています。素材とシルエットの両方が調和して、初めて本当に着心地のよい服が完成する。デザイン画を見ても詳細に指示が入っており、こだわりのあることがわかります。
ブランド名のADIEU TRISTESSEは、フランソワーズ・サガンの名作『Bonjour Tristesse(悲しみよ こんにちは)』から発想を得たもの。「悲しみよ さようなら」、つまり「永遠のハッピーを」という意味が込められています。楽しいときもそうでないときも、服は毎日身につけるもの。だからこそ、いつでも身につける人に寄り添う存在でいたいと、デザイナーは語ります。その願いは、優しい色使いや肌触りのよい素材、体を美しく見せるシルエットのすべてに込められて。身につける人の日々がよりよいものへと導かれるよう、その手助けになれる服づくりを、ADIEU TRISTESSEは心がけています。
PROFILE
最上 智代
ADIEU TRISTESSE デザイナー
アパレルブランドのデザイナーを経て、2008年BIGI入社。
2010年よりADIEU TRISTESSEのデザイナーに着任。
趣味はアート鑑賞と旅。
Photo:MAKIKO NAWA
Text:KAORI YUGUCHI